tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

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現実知らずの思い込み、働き方改革(続き)

2018年04月01日 10時52分48秒 | 労働
現実知らずの思い込み、働き方改革(続き)
 現政権の働き方改革の考え方は、欧米流の雇用の在り方を日本に持ち込もうという事のようです。
 労働移動を自由にし、賃金は個人の職務や成果(job and performance)で決め、同一労働同一賃金がいいというのです。

 しかし日本企業は、そんなことは考えていません。優秀な人間を採用して、仕事を覚えさせる中で適材適所に配置し、出来れば定年まで、わが社に貢献してほしいと新卒一括採用にしのぎを削っています。
 欧米流の「職務に人を当てはめる」形である非正規雇用で済ますのは、特定の定型業務、簡易な単純業務といったのが基本的な考え方です。

 それなのに、非正規雇用が異常に増えたのは、長期のデフレ不況の中で、人件費を下げなければ企業の存続が危機的状態という異常事態の中でのことです。
 その咎めが出て(重要な仕事も非正規を当てたりした結果)種々不具合が起き、非正規の正規化が徐々に進み、統計でも、いわゆる「不本意非正規」は減少しつつあります。恐らく雇用の正常化も近いでしょう。

 労働移動については、欧米では、仕事がなくなれば雇用も打ち切りが原則ですから転職の容易さが問題になりますが、日本では、企業のマーケットが縮小しても、正規従業員は雇用し続け、企業の業態の方を変えて、育てた人材を活用し続ける経営が良い経営といわれます。
 これはこのブログでも旭化成や東レの例を引き(繊維から化学へ)、富士フイルムの場合は コダックとの比較で論じてきています。

 新卒一括採用が無くなるとは考えられない日本の企業社会で、年功要素(能力向上要素)を制度化の中に組み入れている「職能資格給制度」が、欧米流の職務給になることは考えられません。賃上げは「定昇+ベースアップ」といわれるように、1年先輩の賃金は後輩より高いのです。同一労働・同一賃金は日本企業では無理なのです。

 ですから、「働き方改革」でも、正社員は「同一労働・同一賃金」の適用外となっているのです。
 では何と何を同一にするのかというと、同じ職場(定義は企業)で類似した仕事をしている正規従業員と非正規従業員の賃金を合わせようというのです。結局は非正規従業員の賃金改善策という事になっています。

 ところが非正規従業員の賃金は、地域のマーケットで、もともと同一労働同一賃金になっているのです。非正規でが良い人はそれで納得して仕事をしているのです。
 それを、働き方改革では偶々入った企業によって、賃金を変えるべきだというのです。折角地域のマーケットで同一労働同一賃金になっているものを、同じ仕事でも、A社に入った人とB社に入った人の賃金を違えようという事で、企業別格差賃金を、非正規従業員にも適用しようという事のようです。
 会社を変われが賃金も変わります。その会社に入るまで、極端に言えば、隣で仕事をする人が誰かで賃金が違ってくるのです。

 同一労働同一賃金のガイドラインを見れば良く解りますが、お役所も合理的だとこじつけるのに苦労しているのでしょう。企業も苦労すると思います。
 正規を希望する人は、原則、正規で雇い、非正規でいいという人にはその地域のマーケット賃金を適用するというのが最も自然でしょう。

 現政権は、基本的には雇用をすべて欧米流にすること(舶来崇拝?)が良いと考えているようです。これは日本社会の実態についての勉強不足のせいでしょう。
 新卒一括採用のもたらす就活戦線の現状にはいろいろなご意見もあるようですが、これが、日本の極端にまで低い、 若年者失業率を齎しています。

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